こんにちは。

渡辺水華です。

最近、氣になっていることがあります。

勤務している翻訳会社では、
私は一応、医薬が専門分野ということになっていますが、
実際に扱う文書は法務やビジネス関連文書が多く、

法務にはつきものの、”shall”という
助動詞を目にすることが多々あります。

「行こう。」と英語で言うとき、
日本人としては、”Let’s go.”が真っ先に浮かぶと思います。

といっても、”Shall we dance?”というフレーズの登場によって、
“shall”もだいぶ日本人の感覚に馴染む言葉になってきたと思います。

これと同じ用法で、「じゃ、行こうか。」というニュアンスで、
“Shall we go?”と言うこともできますし、
“go”という動詞の部分を言わなくても、文脈からわかる場合には、
“Shall we?”だけでも通じます。

ただ、日常会話では”shall”は、”Shall we…?”という用法以外に
あまり聞くことはありません。

“I shall…”とまで言わなくても、”I will…”だけで、
十分、「これからそれをする」という本人の意思が伝わります。

一人称で用いてもかなり強い助動詞ですので、
これが、”You shall…”ともなってくると、
「~させてやる」ぐらいの勢いがあります。
なので、このような表現は日常会話に登場することはまずないでしょう。

法律文書のshall

ところが、契約書を含め、法務関連文書には、
“shall”が頻繁に登場します。

The Company shall be liable for the loss or damage to the Goods occurring while…
本会社は、~の間に本物品に発生した紛失または破損に責任を負うものとする。

注)responsible (for)は、役割や職務に対する責任を含め広義に用いられますが、
liable (for) は、法的責任(賠償責任)があることを言います。

このように法務文書では、”shall”は義務を表す表現として、
「~するものとする」と訳すことができますが、
なかには、”must”(~しなければならない)と同じように訳す、
つまり、”must”との訳し分けをしない翻訳者さんもいます。

“shall not”であれば、文脈や文の収まりを考慮したうえで、
「~してはならない」と訳すこともなくはありませんが、

否定文であれば、「~しないものとする」または「~しない」、
肯定文であれば、「~するものとする」とすれば、
きっちり収まることが多いですので、”must”との訳し分けのためにも
このような訳文を「~するものとする」のが基本でしょう。

should、mustとの比較

mustの「~しなければならない」に対して、
shouldは「~するべきである」と訳されることが多いですが、
必ずしもこの訳語が常にその場に即しているとはかぎりません。

“must”よりも拘束力が弱く、
「~するのは当然」というニュアンスもありますが、
「~する必要がある」、「~することが望ましい」
「~したほうがよい」など、
「推奨」のニュアンスで用いられることもあり、

判断に迷うこともありますが、
その分、幅広く用いることができる助動詞とも言えます。

たとえば、「次は何したらいいだろうか」は
“What should I do next?”
「今すべきことといえば、この仕事を終わらせることだけだよ。」は、
“The only thing you should do now is to finish this job.”と言えます。

“We should do this right now to make it in time.”は、
「間に合わせるためには今これをやらなきゃ。」という意味で、
この場合の”should”は”need to (do)”とほぼ同義であると言えるでしょう。
(make it in timeは、「間に合う(間に合わせる)」の意。)

また、次にご説明する”have to”よりも
命令的なニュアンスがなく、
主に必要性や推奨事項を伝えることができるので、
人間関係を円滑に運ぶためにも知っておくといい助動詞です。

have toは多用されるが要注意

“You have to finish your homework before watching TV!”
「テレビを見る前に宿題を終わらせてしまいなさい。」

このようにお母さんが学校から帰ってきてすぐに
テレビを見ようとしている子供に注意を促すときの
“have to”はニュアンスとしてはピッタリです。

これが職場の人間関係であった場合、
“I have to finish typing this letter right now to keep the appointment with my dentist.”と、
「歯医者の予約が入ってるから、今すぐこのレターを打っておかないと」言う場合、
このように自分自身に対して”have to”を用いるのは問題ありません。

ただ、これが、
「会議の前に書類を準備しておかないと」と他人に対して言う場合、
“You have to prepare the document before the meeting.”と
このように言ってしまうと、相手は命令されているように感じてしまう可能性があります。

このような場合は、”I think you should prepare…”などとするか、
部下に対しても、”What you should do before the meeting is to prepare the document.”などと言えばよいでしょう。

また、自分に対して使うときでも、
実際にツッコミを入れられた友人がいたのですが、

この友人が結婚を機に、仕事を辞めたことを
英語圏の友達に話しているとき、

実際にはご主人の転勤予定があっての結婚であったため、
退職する必要があって退職したのですが、
そのことを言うために、

“I had to quit my job.”とか、
ほかにもその結婚とともに自分がしたことについて、
“I had to…”を連発していたらしいのです。

すると英語圏の友達から、
なぜ、何もかもが”had to”なの?」と聞かれたと言います。

つまり、英語圏の友達には、
自分の人生の選択肢の一つとして「結婚」を選んだはずなのに、
あたかもそれに伴う行動が「強制」されてでもいたかのように聞こえたのでしょう。

このような場合は、”had to”を使わずに、
“I needed to quit my job.”とすれば、
合理的な必要性があったことが伝わりますし、
単に、”I left my job.”とだけ言っておけばよいでしょう。

注) 英国式では、”quit”の過去形、過去分詞は”quitted”なのですが、
「(仕事)を辞めた」を意味するものとして
“quitted”が使われることはほとんどないようです。

米国式では”quit”の過去形は”quit”ですが、
たとえば、”He(She) quit his(her) job.”のように
過去形であることが明らかな場合以外、
紛らわしさを避けたいのであれば、違う動詞を使ってもよいでしょう。)