こんにちは。渡辺水華です。

私が勤めている翻訳会社の業務の一つに
ネイティブによって修正された英訳文を
チェックするというものがあります。

私の専門は主に医薬翻訳なのですが、

ネイティブチェッカーには医薬用語の知識がない人がいたり、
原文である日本語がほとんど分からない人がいたりするので、

ネイティブから修正された英文が
原文からかけ離れていないかどうかをチェックするのが
私の仕事ということになります。

その中で改めて「へぇ~」と思ったことがありました。

疾患や症状の重さ(重症度)を表す形容詞

治験を扱う文書にはよく、
治験薬を投与された被験者に起こり得る望ましくない疾患や症状を意味する
有害事象(adverse event, AE)」という用語が出てきます。
治療との因果関係の有無は問わず、そのような症状を「有害事象」と呼びます。

有害事象の症状の重さは、

mild(軽度の)
moderate(中等度の)
severe(重度の)によって表されます。

そして、「重篤な有害事象」は、”serious adverse event (SAE)”と言われます。

また、「等級(グレード[Grade])」によっても表されます。

参考までに挙げますと、下記の5段階になります。

[Grade 1]軽傷
[Grade 2]中等症
[Grade 3]重症、医学的に重要であるが、生命を脅かすものではない。
[Grade 4]生命を脅かす
[Grade 5]有害事象による死亡

先日チェックした訳文に、
原文の「グレード2以上」の訳語として、
“Grade 2 or severe”というものがありました。

これですと、「グレード2または重度(の)」という意味になり、
「~以上」が訳出されていないことになります。

そこで、ネイティブから、
「正しくは、”Grade 2 or more severe”ではないか」
と指摘が入りました。
(「グレード2以上」を意味する訳語)

当然、「そりゃ、そうだ」と思った私は、
訳文をこのとおりに修正したのです。

severeの比較級は、”severer”か”more severe”か。

ところが、その後に、
原文は同じ「グレード2以上」なのに、
“Grade 2 or severer“という訳語が出てきました。

しかも、その部分はネイティブからもお咎めなし。

通常、英語の形容詞の比較級は、

例外的に変化する
(1)good→better、bad→worseなどを除いては、

(2)形容詞の末尾に”er”または”r”を付けるか、

(3)形容詞の前に”more”を付けるかというかたちになります。

つまり、一つの形容詞が(2)にも(3)にも対応するとは
考えたこともありませんでした。

結局、”more severe”が優勢らしい。

結局、”severe”の比較級については、
“severer”でも”more severe”でも「誤り」であると言い切っている説はありません。

ただ、実際に使用したときの「言いやすさ」、「理解しやすさ」を考慮すると、
“more severe”の方が優勢であって、
“severer”は発音の面から考えても”non-standard”であるとする説もあります。

いずれにしても、現時点では”more severe”の方が使用例が多く、
ネイティブも真っ先に”more severe”に修正していたということは、
“more severe”とするのが一般的と解釈してよいでしょう。