こんにちは。

渡辺水華です。

私たちは英語で名前を書くとき、何の疑いもなく、
下の名を最初に、その後に上の名を書くと思います。

なぜなら、そのように教わりますし、
さまざまな書類に英語表記で記入する際も、
最初に下の名を書くよう促されるからです。

また、敬称としては、”Mr.”と”Ms.”が用いられます。

“Ms.”というのは、
独身の女性に”Miss”を付け、
既婚女性には”Mrs.”を付けるという
従来からの敬称の付け方は女性差別に当たるとして、
その差別を避けるために生み出されたものです。

英語での呼び方、いろいろ

たとえば、日本とアメリカとでは、
下の名で呼ばれる確率は
アメリカの方が圧倒的に高いと思います。

日本では、学生同士であれば、
「山田太郎」さんのことを最初は「山田君」などと呼び始め、
親しくなると、「太郎」とか、
あだ名で読んだりすることもあるかも知れません。

これがアメリカですと
最初から”Taro”と呼ばれることがほとんどでしょう。

なかには、親のことさえ、下の名で呼ぶケースもあったりします。

私がニューヨーク郊外に滞在していた頃、
この習慣が個人を尊重しているようで羨ましくさえありました。

日本では、結婚したり子供が生まれたりすると、
女性は特に「奥さん」、「~ママ」などと呼ばれ、
個人名で呼ばれることが激減します。
夫にすら「ママ」とか「母さん」とか、
子供目線を中心に呼ばれたりするのです。

しかし、社会人としては、日本人が女性に対しても、
苗字に「さん」付けで呼ぶという意味では、
男性と同じ扱いですし、

従来から”Miss”や”Mrs.”に当たる敬称を付けて
呼ばれているわけではなかったという意味では、
どちらの方が差別的であるかなどと
比較するものではないかもしれません。

いずれにしても困るのは、
日本人としては「さん」や「様」に当たる敬称を
人名の後に付けないと礼儀としても
「心の収まり」がつかないという感覚があり、

本来は「山田さん」で済むところを、
性別がわからないと、”Mr.”なのか”Ms.”なのかわからない、

さらに”Ms.”がなかった時代には、
その女性が未婚か既婚かがわからなければ、
敬称さえ付けられなくて困ることもあったのでは…と思えてきます。

むしろ、呼び捨て?!

つまり、親しい間柄であれば、
下の名を呼び捨てしてもいいという意味では、
日本語も英語も同じですが、

面識がなく、苗字しかわからない場合、
「~さん」と呼びたい日本人としてはちょっと困りますね。

正式な文書は別として
(逆に正式な文書であれば作成前に
詳細な背景や情報が把握できているものと想定して)、

業務上必要なe-mailなどで
取引先の担当者の苗字しかわからない場合は、
敬称なしで苗字をそのまま書くケースも見受けられ、
それでも特に「失礼」とはみなされないようです。

そもそも、「~さん」と”Mr.”や”Ms.”は同等ではなく、
日本語では「花子さん」と呼べても、
英語では、”Ms. Hanako”とは言いません。
また、フルネームの頭に”Mr.”や”Ms.”を付けることもありません。
(封筒などに書く宛名は「敬称 + フルネーム」でOK、
ただし、”Dear”の次に「敬称 + フルネーム」は「間違い」とされています。)

Ms. Hanako Yamada → X
Hanako Yamada →〇(敬称なし)
Ms. Yamada →〇
Hanako →〇(敬称なし)

また、自己紹介のときに、
“I am Mr. Yamada.”と言っても大丈夫です。

日本人的な感覚ですと、
自分のことを「山田さん」と言っているようで
抵抗があるかも知れませんが、
これは単に”Yamada”がfamily nameであって、
「山田家」の男性であることを言っているにすぎません。

英語なのに「~さん」付けでも大丈夫な場合

海外の取引先と日本企業との付き合いが
一定期間あって、日本人が「~さん」付けで
他人を呼ぶことを取引先が知っているのであれば、

“Dear David-san”のように”-san”を付けて
メールのやり取りをすることも多いです。

たとえば、付き合いの長い取引先の担当者が変わり、
その方が男性か女性かわからない場合、

呼び捨てではどうも抵抗があるのであれば、
“-san”付けが便利かと思います。

歴史上の人物

歴史上の人物の名前の表記については、
厳密に決められたルールはないようですが、

明治維新前か後かを目安として、
明治維新前の人物であれば、苗字が先、
明治維新以降の人物であれば、苗字が後とも言われています。

それでも、実際は、たとえば、「徳川家康」の場合、
“Ieyasu Tokugawa”のように、
名前が先で苗字が後に表記されている文献の方が多いとされており、
学術論文では、「伊藤博文」が”Ito Hirofumi”と表記されている例もあります。

また、ハンガリー人も日本人と同じく名前が先、苗字が後、
韓国や中国ではニュースに出て来るような政治家の名前は
英語でも苗字が先で名前が後、

台湾や香港出身の芸能人で、海外で活躍する人は、
英語名(名前が先で苗字が後)を持っているなど、
ケースバイケースなので一概にどちらが正しいとは言えません。

正式文書や申請書などでは、”YAMADA, Taro”と、
苗字を大文字にして先に、
名前は最初の文字だけ大文字で表記する方法がとられます。
(明確さを期すために「大文字で」と指示があるときは、
全部大文字で書くことになりますが。)

ただ、履歴書やレターなどに、”Taro YAMADA”などと書くのは
ネイティブには奇異に感じられることもあるようで、
避けた方がよいとも言われています。

いずれにしても
「どれが絶対に正しい」と言い切れないところが
歯がゆいですね。