こんにちは。

渡辺水華です。

日本人が英語を学ぶうえで、
上級者でさえ頭を悩ませる分野のひとつが
冠詞(不定冠詞と定冠詞)です。

“a”(母音で始まる名詞には”an”)は、
可算名詞の単数形に付されるものです。
例)a book, an apple

“the”は可算名詞であれ、不可算名詞であれ、
単数形であれ、複数形であれ、

この世に一つしかないもの、
話者だけでなく聞き手もどれを指すかを理解しているものに付されます。

例)「地球」を意味する”the earth”、
インターネットもこの世に1つしかないものとして、”the Internet”
共通の話題としてある1冊の本を話者と聞き手が認識している場合は”the book”

このほか、動物などの「種」全体を総称する場合にも用いられます。
例)The lion is a carnivorous mammal of the feline family.

訳し分けは必要か

たとえば、
(1) A new machine will increase productivity at workplace.
という英文があったとします。

よく見かける類の訳文は、
「新しい機械は職場における生産性を増加させるだろう。」です。

では、
(2) The new machine will increase productivity at workplace.
はどうでしょう。

よく見かける類の訳文は、
「新しい機械は職場における生産性を増加させるだろう。」です。

学校の英文和訳であれば、いずれの訳文にも
「X」が付くことはまずないと思いますが、

翻訳者でありながら、”a”と”the”の訳し分けができていない時点で、
“a”や”the”が飾りでしかないと思っていることを露呈していることになります。

日本人としては「どうでもいいやんけ」と思いたくなるのもわかりますが、
このような姿勢を押し通すと、

“a(an)”や”the”が無数に登場する英文を通して
筆者が伝えたい情報のニュアンスが伝わらず、
読者にも文脈がピンとこないという結果になりかねません。

日本語で文脈を考えてみる(1)

では、この英文が生まれた背景を日本語で設定していきましょう。

ある作業場でずっと古い機械を使い続けていたとします。

しょっちゅう、故障するようになり、
作業が進まず、「生産性(productivity)」が落ちてしまった場合、

「新しい機械があれば解決するのに」と思うはずです。

ただし、「新しい機械」とは具体的に存在する機械ではなく、
同じ種類の新しい機械か、
同じ機種をさらに進化させた機械を想定したものです。

このような場合は、その機械のことを
a new machine”と言います。

具体的に存在するものを指すのではなく、
「新しいのがあればな…」というニュアンスです。

「まだ存在しないものを存在させる」ときや
不特定多数存在するもの(機械)のうち、どれか1つのものを漠然と指すとき、
“a new machine”と言うのです。

関連記事にも書きましたように、

「無」から「有」を生み出す冠詞が
不定冠詞の”a(an)”なのですね。

状況によっては、
「新しい機械(new machine)」を指すことが明らかである場合、
“a new one”と言うことも可能ですね。

“Perhaps, we need to buy a new one.”
「新しいのを買う必要があるようね。」という感じです。

日本語で文脈を考えてみる(2)

たとえば、X社がその作業場にある機械と
同じ機能を備えた新しい機種を開発し、発売したとします。

作業場の1人がその新発売の機種のことを知っていて、
同僚にその新機種のことを話していた場合、

「その(新発売の)機械だったら、
きっと問題が解決するよね。」などと言うはずです。
このようなときは、”the new machine”となり、
定冠詞の”the”を付すことになります。

“Perhaps, we need to buy the new one.”
「その新しいの、買わないとね。」という感じですね。

このような背景を踏まえると…

(1) A new machine will increase productivity at workplace.
新しい機械があれば、職場の生産性が向上するであろう。
(「新しい機械があればな…」というニュアンス)

(2) The new machine will increase productivity at workplace.
その新しい機械を導入すれば、職場の生産性が向上するであろう。
(特定の機種や機械を指すので具体性を帯びた話になります。)

話の流れによっては、
(その)新しい機械は職場の生産性を向上させるであろう。
(その)新しい機械によって職場の生産性が向上するであろう。
など、いろいろ考えられますね。

“increase”とは何かの度合いを「増す」ことですので、
「生産性」については、「向上させる」、「高める」などと訳しても、
内容を変えずに聞き手に情報を伝えることができます。

余談ですが、”at”や”on”、”in”は、
場所や時間(時期)などを表す前置詞で、
学校では「~で」、「~に」などと教わります。

この一文字で済むのであれば、いちいち「~における」などと訳す必要はなく、
むしろこのような訳し方は極力避けたほうが、冗長な訳文にならずに済みます。
(上記では”at workplace”を「職場の」とし、
“productivity(生産性)”を修飾するかたちにしており、
これでも内容を変えずに情報が伝わっていると判断しました。)

「~における」を使うことによって訳文に重みを持たせようとする発想自体が
浅はかであり、読む者を混とんとさせる元凶であると私は考えます。